4. 日本の鍼・灸の専門職:はり師、きゅう師 

目 次

4-1 はり師、きゅう師の学校教育

4-2 はり師、きゅう師の卒後研修、生涯研修

4-3 はり師、きゅう師の数

 

4-1 はり師、きゅう師の学校教育

4-1-1 はり師、きゅう師の免許、教育の制度

文献
1)あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 (昭和22年12月20日 法律第217号), 電子政府の総合窓口(e-Gov),
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000217 (2020.04.15)

 

4-1-2 はり師きゅう師の学校・養成施設の省令で定める認定基準

はり師及びきゅう師養成施設指導ガイドライン2)により、はり師きゅう師養成施設にあっては、94単位以上で、2,655時間以上の講義、実習等を行うよう定められている。

文献
1)あん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師に係る学校養成施設認定規則(昭和26年9月13日 文部省厚生省令第2号) , 厚生労働省法令等データベースサービス, https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80141000&dataType=0&pageNo=1 (2020.04.16)
2)はり師及びきゅう師養成施設指導ガイドラインの一部改正について(平成29年3月31日) (医政発0331第51号), 厚生労働省法令等データベースサービス
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2759&dataType=1&pageNo=1  (2020.04.16)

 

4-1-3 はり師、きゅう師の学校・養成施設

文献1)より作成した。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を養成する文部科学大臣指定の学校には大学と視覚支援学校専攻科理療科などの特別支援学校高等部専攻科がある。厚生労働大臣指定の養成施設には専門学校のほか、視覚障害者に職業教育をおこなう就労移行支援(養成施設)などの専修学校がある。募集停止の施設数及び入学定員は除外しているため、4-1-4の学校数と異なっている。養成施設は令和2年4月現在。

文献
1)医療関係技術者養成施設数・入学定員一覧. 文部科学大臣指定(認定)医療関係技術者養成学校一覧(令和2年5月1日現在).文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20210323-mxt_igaku-100001205_20.pdf (2020-04-16)
2)就労移行支援(養成施設).国立障害者リハビリテーションセンター
http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/General/training3/ (2020-04-16)

 

4-1-4 はり師国家試験の受験者数と学校区分
-第29回はり師国家試験(令和3年2月28日実施)の新卒受験者-

  •  第29回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の学校別合格者状況.厚生労働省.Press Release.(令和3年3月26日)により作成した。学校数は受験者が既卒者だけの学校は含んでいない。
  • 江戸時代に視覚障害者のための鍼の教育施設ができ、視覚障害者に対する職業教育としての鍼灸教育は長い歴史を持つ。戦後にはり師、きゅう師の学校教育制度ができ、視覚障害者に対しては文部省管轄の特別支援学校高等部専攻科、厚生省管轄の視覚障害者のための養成施設などで鍼灸教育が行われている。晴眼者の鍼灸教育は主に厚生労働省、都道府県知事管轄の専修学校(専門学校)で行われ、学校数の増加などにより、令和3年卒業予定のはり師国家試験受験者は晴眼者の学校の受験者が約95%となっている。

 

4-2  はり師、きゅう師の卒後研修、生涯研修

4-2-1  はり師、きゅう師の卒後研修の規制・管理

  • はり師、きゅう師の卒後研修、生涯研修についての法規制はない。
  • 卒後研修で厚生労働省が規制管理しているのは、療養費の受療委任を取り扱う施術管理者の要件としての研修で、保険局長通知1)により示されている。研修の目的は「適切に療養費の支給申請を行うとともに、質の高い施術を提供できるようにする」と記載されており、厚生労働省保険局長に登録された公益財団法人(登録研修機関として登録されているのは公益財団法人東洋療法研修試験財団)が実施する研修を受講する。研修は16時間、2日間以上の講義による研修とされ、研修修了年月日から5年間が有効期間としている。

文献
1)令和2年3月4日.保発0304第1号献.はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について(厚生労働省保険局長)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/20200304_01.pdf (2021.04.28)

 

4-2-2  実施されている卒後臨床研修、生涯研修

(公益財団法人東洋療法研修試験財団の生涯研修)
1.法律に基づく指定試験機関及び指定登録機関である公益財団法人東洋療法研修試験財団の事業として生涯研修の実施が定款に記載されている。生涯研修会を実施している関係団体a)及び学会を開催している関係学会b)と連携して生涯研修の推進を図ると実施要領1)に記載している。関係団体は財団と共催して生涯研修を実施することができる。研修会の期間は単年度とし、関係団体、関係学会が実施する研修会などで25単位以上取得した研修修了者に生涯研修終了証書を交付する。8年間に生涯研修終了証書を5回取得した場合は理事長表彰を行う。
2.令和元年度の生涯研修受講者数13,275人、修了証書交付者数1,046人、1回目表彰者数49人、2回目表彰者数50人、3回目表彰者数19人2)

(公益社団法人全日本鍼灸学会認定制度)
認定制度は1999年に設けられたが、2019年より新しい認定制度3)が始まっている。新しい認定鍼灸師制度は①安全で標準的な鍼灸治療を提供でき、医療機関と連携が行える、国民から信頼される鍼灸師の育成と認定を行う。② 鍼灸師が修得すべき知識・技能・態度を明確にし、それらに則って教育・評価することにより、鍼灸師の質を担保することを目的としている。研修の内容は、指定研修施設の指導鍼灸師の下で3年(720時間)以上、研修カリキュラムに沿った臨床研修を行い、その期間の鍼灸が奏功した40症例リスト、10症例の簡単な症例報告を作成し、2回以上の筆頭演者としての学会での発表と学会の出席、e-learningの受講などを行う。筆記試験、口頭試問を含む2次の審査を経て、認定される。認定鍼灸師の認定期間は5年間で、学会参加、e-learningなどの受講と学会発表または症例報告などの要件を満たして更新申請をおこなう。

(国民のための鍼灸医療推進機構:AcuPOPJ)
鍼灸の職能団体(公益社団法人日本鍼灸師会、公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会)、学会(公益社団法人全日本鍼灸学会)、教育機関(公益社団法人東洋療法学校協会)の4 団体が協力し設立した任意団体「国民のための鍼灸医療推進機構」は、新規免許取得者で、国民のための鍼灸医療推進機構が定める受講要件を満たしている対象者に2年間の鍼灸師卒後臨床研修を実施している4)。機構の規則や管理体制、研修制度の規則等の情報は機構が運営するポータルサイトには公表されていない。

(その他)
一部の鍼灸養成施設、医療施設等で卒後臨床研修を、学会、職能団体等で生涯研修を実施している。

注:
a)関係団体
公益社団法人 全国病院理学療法協会
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 東洋療法学校協会
公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
公益社団法人 日本鍼灸師会
社会福祉法人 日本盲人会連合
公益社団法人 全日本鍼灸学会
経絡治療学会
全国盲学校長会
東洋はり医学会
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
b)関係学会
公益社団法人 全日本鍼灸学会
一般社団法人 日本東洋医学会
日本伝統鍼灸学会
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
日本慢性疼痛学会
日本良導絡自律神経学会
日本鍼灸臨床懇話会

文献
1)生涯研修実施要領 (平成28年4月1日施行)、公益財団法人東洋療法研修試験財団.
http://www.ahaki.or.jp/training/data/guideline20160401_r2.pdf (2021.04.28)
2) 令和元年度事業報告書.公益財団法人東洋療法研修試験財団.令和2年5月
http://www.ahaki.or.jp/about/data/jigyou_houkoku_2019.pdf (2021.04.28)
3)認定制度とは.公益社団法人全日本鍼灸学会.
https://jsam.jp/contents.php/060100CdODeA/  (2021.04.28)
4)鍼灸師卒後臨床研修の申し込み.鍼灸net-国民のための鍼灸医療推進機構(AcuPOPJ) https://shinkyu-net.jp/training2 (2021-5-9)

 

4-2-3卒後研修を実施している団体の加入状況
-卒業5年未満のはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の調査-

公益社団法人東洋療法学校協会加盟の会員校校と非加盟協力校の卒業生で、平成24年から平成28年までに国家試験に合格し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の免許を取得した者(約11,600名)を調査対象とし、調査票の郵送先が確認できた者を調査客体とした。調査は平成28年10月に実施した。調査客体数は10,904件、回答数は2,615件(回答率24%)。回答者の免許種別ははり師84.9%、きゅう師83.3%、あん摩マッサージ指圧師51.2%であった。実務従事「有」は、はり師、きゅう師ともに76.1%、あん摩マッサージ指圧師は79.8%であった。学会等の入会比率は25.4%で、主は全日本鍼灸学会7.6%、経絡治療学会4.2%であった。業界団体(職能団体)への加入率は23.1%で、主は全日本鍼灸マッサージ師会8.9%、日本鍼灸師会4.4%であった。

文献
第5回あん摩マッサージ指圧師・はり師及びきゅう師 免許取得者の進路状況 アンケート調査報告書.公益社団法人東洋療法学校協会
https://www.toyoryoho.or.jp/book/an_05.pdf (2021-05-10)

 

4-3 はり師、きゅう師の数

4-3-1 就業はり師、きゅう師の数とはり、きゅうを行う施術所数の年次推移

注:
1)2010年は東日本大震災の影響により宮城県が含まれていない。
2)藤井らは、12保健所を抽出し、保健所の名簿に登録されている業者の調査を行った結果、名簿に登録されている施術所の26.5%に営業実態がなかったことから、保健所管轄の業者名簿には営業実態のない非営業施術所が除外されないまま残っており、衛生行政報告例の施術所数および就業者数は下方修正する必要性が示唆されると述べている2)

文献
1)厚生労働省, 平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況, https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/kekka3.pdf(2021-05-10)
2)藤井亮輔、山下仁、岩本光弘. あん摩業、はり業、きゅう業に係る施術所数ならびに修行者数の実態に関する調査研究. 全日本鍼灸学会雑誌 2005;55(4):566-73
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/55/4/55_4_566/_pdf/-char/ja(2021-05-11)

 

4-3-2 都道府県別の就業はり師、きゅう師の数

人口10万人当たりはり師、きゅう師数は大阪、東京、京都では150人を超えている。

平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf (2021-05-11)の統計表5、参考2より作成した。

 

4-3-3 就業はり師、きゅう師の晴眼者、視覚障害者の数と比率

文献の統計表より作成した。

文 献
就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師,目が見える者―目が見えない者別;柔道整復師数及び率(人口10万対),都道府県別.平成30年度衛生行政報告例. 政府統計の総合窓口(e-Stat)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031860648&fileKind=1 (2021-05-11)

 

ページの先頭へ

前のページ                                                       

    次のページ