1-1. ヨーロッパの鍼の担当者数
1-2 鍼の治療または職業を管理規制している国
1-3 鍼を法律により管理規制している国
1-4 鍼治療が医師のみに許可されている国
1-5 はり師を専門的職業として確立している国
1-6 ヨーロッパ各国の主な鍼の担当者
1-7 鍼が国の医療保険の対象となっている国
1-8 229,230名を対象とした鍼の安全性の評価
1-9 慢性疼痛保有者の鍼受療経験の割合
1-1. ヨーロッパの鍼の担当者数 (2010年)
CAMbrellaの2010年の調査によると、ヨーロッパ(EU加盟国27か国と準加盟国12か国(EEA/EFTA,FP7)の合計39か国)の鍼の施術者は96,360人(医師8万人、非医師16,360人)で、人口10万人当たり21人となり、鍼は補完代替医療の領域の中で担当者が最も多い領域となっている。
Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 14-5
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP5final.pdf(2017-1-31)
1-2 鍼の治療または職業を管理規制している国 (2010年 26カ国)
Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012.p22. Table 5.2.1に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP2-part_1final.pdf (2017-1-31)
1-3 鍼を法律により管理規制している国 (2010年)
鍼が評価され法律により鍼を管理規制している国は12か国ある。
Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 112に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP5final.pdf
(2017-1-31)
1-4 鍼治療が医師のみに許可されている国 (2010年)
Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 112に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP5final.pdf(2017-1-31)
1-5 はり師を専門的職業として確立している国(2010年)
Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012.22-3に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP2-part_1final.pdf (2017-1-31)
マルタ、スイスとも国の法規などにより鍼に関する職業は管理され、はり師として認証されると共に、欧州連合(EU)の規制職業(Regulated Profession)に、マルタはacupuncturist、スイスはAkupunkteur(ドイツ語)/ Acupuncteur(フランス語)のタイトルで、登録していると記載されているが、EUの規制職業のデータベースで検索すると、マルタのみであった。
(補足説明)
医療や法律などの専門的な職業については、EU加盟国およびスイス、ノルウェーなどの国の間で、他の加盟国で取得した資格により自国で職業に就くことを認める規制職業(Regulated Profession)の制度がある。規制職業は各国により異なり、欧州委員会(EC)のデータベース(Regulated professions database)1)で各国の規制職業を検索することができるが、はり師(acupuncturist)を認証している国はマルタのみであった。
1)http://ec.europa.eu/internal_market/qualifications/regprof/regprofs/dsp_bycountry.cfm(2016-2-1)
1-6 ヨーロッパ各国の主な鍼の担当者
-:不明
Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012.54-217に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP2-part_1final.pdf (2017-1-31)
このレポートは2012年11月5日まで更新された情報が記載されている。
中東のイスラエル、トルコはEFTA加盟国と自由貿易協定を締結し、EUの第7次フレームワークプログラムに参加していることから、ヨーロッパのリストに掲載されている。
注1 Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012. 209-10の記載に基づくが、Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 112の記載(1-4 鍼治療が医師のみに許可されている国)と異なっている。
注2 Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012.75の記載に基づくが、Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 112の記載(1-4 鍼治療が医師のみに許可されている国)と異なっている。
注3 Solveig Wiesener, Torkel Falkenberg, Gabriella Hegyi, et al. Legal status and regulation of CAM in Europe Part I – CAM regulations in the European countries. Final Report of CAMbrella Work Package 2. 2012. 147の記載に基づくが、Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 112の記載(1-4 鍼治療が医師のみに許可されている国)と異なっている。
1-7 鍼が国の医療保険の対象となっている国 (2010年)
Klaus von Ammon, Francesco Cardini, Ute Daig, et al. Health Technology Assessment (HTA) and a map of CAM provision in the EU. Final Report of CAMbrella Work Package 5. 2013. 113-4に基づき作成した。
http://www.cam-europe.eu/dms/files/CAMbrella_Reports/CAMbrella-WP5final.pdf(2017-1-31)
1-8 229,230名を対象とした鍼の安全性の評価(前向き観察研究)
Safety of Acupuncture: Results of a Prospective Observational Study with 229,230 Patients and Introduction of a Medical Information and Consent Form より
ドイツでは229,230名の外来患者に対して、前向き観察研究で鍼の有害事象の情報を集め、その出現頻度を明らかにして、鍼のインフォームドコンセントに用いる同意書を作成した。
方法
2000年12月から2004年8月までの期間、疾病金庫による、膝関節または股関節の慢性変形性関節症による疼痛、腰痛、頸部痛、頭痛、アレルギー性鼻炎、喘息、月経困難症の鍼治療を受けた18歳以上の外来患者の前向き観察研究が行われた。鍼治療は140時間以上の鍼の卒後研修を受けた医師によりおこなわれた。
各治療サイクルの終了時、患者は標準化した質問表に回答し、さらに鍼の有害事象と有害事象の治療を要した場合は治療の種類について記述した。分析は専門家が有害事象を分類し、出現頻度は欧州委員会のガイドラインに基づき分類された。これらの研究結果に基づき鍼医療の同意書が作成された。
結 果
229,230名(平均年齢51歳、65%が女性)の外来患者が研究に登録し鍼治療を受けた。患者は平均10回の鍼治療を受け、合計220万回の鍼治療が分析された。鍼治療をおこなった医師は13,579名で、平均年齢は46歳。鍼の平均臨床経験は6.9年であった。
全体で19,726名(8.6%)の患者が少なくとも1つの有害事象を経験していた。治療が必要な有害事象は4,963名(2.2%)が経験していた。合計24,377の有害事象が報告された。よく起こる有害事象は微小な出血と血腫(6.1%)であった。出現した有害事象の数と頻度、鍼医療の同意書に掲載された有害事象の頻度の表記を表1に示す。有害事象の39.4%は治療中に起こり、60.6%は治療後に出現した。最も長い有害事象の持続期間は180日で、下肢の神経障害であった。鍼に関連した死亡や永続的な損傷はなかった。
鍼のインフォームドコンセントに用いる鍼のリスクを示した5つの要素から成る鍼医療の同意書が作成された。
注:医薬品の有害事象に用いられている欧州委員会のガイドラインに従い、同意書に記載する鍼の有害事象の頻度は次のように区分された。
極めてよく起こる very common (≥1/10); よく起こるcommon (≥1/100 to <1/10) ; 一般的でないuncommon (≥1/1,000 to ≤1/100) ; まれrare (≥1/10,000 to ≤1/1,000); 極めてまれvery rare (≤1/10,000); 知られていないnot known
文 献
Claudia M. Witta, Daniel Pacha, Benno Brinkhausa, et al. Safety of Acupuncture: Results of a Prospective Observational Study with 229,230 Patients and Introduction of a Medical Information and Consent Form. Forsch Komplementmed. 2009;16:91–7
https://www.karger.com/Article/Pdf/209315 (2017-10-04)
1-9 慢性疼痛保有者の鍼受療経験の割合
2003年に、ヨーロッパ15カ国とイスラエルの計16カ国を対象に電話調査を行い、回答者46,934名の中から、18歳以上の慢性疼痛症状保有者(①6か月以上の痛み ②先月に痛みを経験 ③週に2回以上の痛み ④最後の痛みの強さは数値評価スケールで5以上の基準を全て満たした者)で質問調査に協力した4,839名(各国約300名)の回答を分析した研究によると、回答者の69%は慢性疼痛症状に対して非薬物療法を使用した経験が有り、マッサージ(30%)、理学療法(21%)、鍼(13%)などが使用されていた。
慢性疼痛症状に対する鍼施術の経験はスウェーデンで41%、オーストリア、スイス、ノルウェー、デンマーク、オランダで約25%使用されていたが、フィンランドでは5%、スペイン、ポーランド、イタリアでは6〜7%であった。
各国比較:慢性疼痛症状保有者に占める慢性疼痛に対する鍼受療の経験者の割合
下記文献 図17より
文献
Breivik H, Collett B, Ventafridda V, Cohen R, Gallacher D. Survey of chronic pain in Europe: Prevalence, impact on daily life, and treatment. Eur J Pain. 2006; 10: 287–333 http://www.nascholingnoord.nl/presentaties/2012_02_02_Breivik_et_al___Survey_of_chronic_pain_in_Europe.pdf (2020.07.14)